Notion・Confluenceの代替を自社サーバーに——社内WikiOSS「Docmost」を日本語で立てて分かった、翻訳100%でも「日本語検索に穴がある」話と対策
社内の手順書・議事録・顧客メモを Notion や Confluence に置いている会社は多いと思います。「人数課金が積み上がる」「社外のクラウドに社内文書を置きたくない」という声に対して、自社サーバーで動く社内Wiki OSS「Docmost(ドックモスト)」を実際に立てて、日本語で使えるところまで確かめました。
結論を先に書きます。
- docker一式で数分で動きます(本体+PostgreSQL+Redis の3コンテナ。当社環境では起動から画面表示まで6秒)
- 日本語UIは翻訳率100%(1,339/1,339キー)。設定で日本語を選ぶだけで、画面はほぼ完全に日本語です
- ただし 日本語の全文検索には穴があります。「見積」「A社」は当たるのに「議事録」「契約更新」が0件——複合語の切り方が原因で、運用で回避できます(後述)
- 無料の Community 版で、リアルタイム共同編集・スペース・全文検索・Markdown入出力まで使えます。SSO・細かい権限・Confluence直接インポートは有料版です
数字はすべて 2026年9月3日に v0.95.0(最新)で実測したものです。
Docmostとは
Docmost は TypeScript 製のオープンソース Wiki・ドキュメント共有ツールです(AGPL-3.0・GitHubスター約21,500)。Notion や Confluence の「ページを階層で整理し、複数人で同時に編集する」使い勝手を、自社サーバーで再現することを狙っています。
- リアルタイム共同編集:同じページを複数人が同時に編集でき、カーソルが見えます
- スペース:部署やプロジェクト単位の「本棚」。スペースごとにメンバーと権限を持ちます
- ページの階層:スペースの中でページを入れ子にし、左のツリーで辿ります
- 図:Draw.io、Excalidraw、Mermaid をページ内に描けます
- コメント・メンション・通知:ページやコメントで @メンションすると通知が飛びます(メール通知も設定可)
- 全文検索、公開共有(社外にページを公開URLで見せる)、Markdown/HTML の入出力
- 認証はメール+パスワードが標準。Google 等の SSO は有料版
無料版(Community Edition)と有料版(Business/Enterprise)の境界は、公式の料金ページの説明どおりです。Community に含まれるのは共同編集・スペース・全文検索、Business で加わるのが SSO・AI機能・細かい権限・Confluence からの直接インポート・メールサポートです。リポジトリ内でも apps/server/src/ee と apps/client/src/ee だけが別ライセンスで、それ以外は AGPL です。
数分で立てる(docker・公式構成)
公式リポジトリの docker-compose.yml をそのまま使い、公開URLと秘密鍵だけ変えます。
services:
docmost:
image: docmost/docmost:latest
depends_on: [db, redis]
environment:
APP_URL: "https://wiki.example.co.jp" # 社員がアクセスするURL
APP_SECRET: "openssl rand -hex 32 の出力" # 必ず変える
DATABASE_URL: "postgresql://docmost:STRONG_DB_PASSWORD@db:5432/docmost"
REDIS_URL: "redis://redis:6379"
ports: ["3000:3000"]
volumes: [docmost:/app/data/storage]
restart: unless-stopped
db:
image: postgres:18
environment: { POSTGRES_DB: docmost, POSTGRES_USER: docmost, POSTGRES_PASSWORD: STRONG_DB_PASSWORD }
volumes: [db_data:/var/lib/postgresql]
restart: unless-stopped
redis:
image: redis:8
command: ["redis-server", "--appendonly", "yes", "--maxmemory-policy", "noeviction"]
volumes: [redis_data:/data]
restart: unless-stopped
volumes: { docmost: {}, db_data: {}, redis_data: {} }
docker compose up -d の後、最初にブラウザで開くとワークスペース名と管理者アカウントを作る画面が出ます。ここで作ったのが最初の管理者です。以降のメンバーは「ユーザーを招待」から追加します(招待メールを飛ばすには SMTP の設定が要ります。MAIL_DRIVER=smtp と SMTP_HOST 以下の環境変数で指定します)。
添付ファイルは既定でコンテナ内のボリューム docmost に入ります。容量が増えるなら STORAGE_DRIVER=s3 で S3 互換ストレージ(MinIO 等)に逃がせます。
日本語で使う
右上のワークスペース名 → 設定 → アカウントの「設定」→ 言語で 日本語 (Japanese) を選びます。言語はユーザーごとの設定です。

デモとして「営業部」スペースに、新人向け手順書・週次議事録・顧客メモの3ページを入れました。ページは Markdown で作れます(後述のインポートで一括投入も可)。

設定画面も日本語です。左メニューでグレーになっている「Security & SSO」「Audit log」「API管理」が有料版の機能で、ここだけ英語のまま残ります。

翻訳ファイルを直接数えると、英語 en-US/translation.json の 1,339キーに対して日本語 ja-JP も 1,339キーで、未訳はありませんでした。当社がこれまで見てきた OSS(Krayin は日本語なし、Zammad は23%、Vikunja は91%)と比べても、Docmost の日本語対応は完成度が高いです。
実測で見つけた穴:日本語の全文検索
翻訳が100%でも、検索は別問題でした。デモの3ページに対して検索した結果がこちらです。
| 検索語 | 結果 | 本文にある語 |
|---|---|---|
| 見積 | 1件ヒット | 「見積は必ず上長の承認を…」 |
| A社 | 2件ヒット | 「顧客対応メモ: A社」「A社の契約更新は…」 |
| 業務手順 | 1件ヒット | 「新人向け 業務手順書」 |
| 議事録 | 0件 | 「週次ミーティング議事録」(タイトルにある) |
| 契約更新 | 0件 | 「A社の契約更新は9/10まで…」 |
「議事録」はページタイトルに含まれているのに当たりません。原因は検索基盤です。Docmost の全文検索は PostgreSQL の機能(tsvector)を使っており、これは空白や記号で単語を切る設計です。日本語は空白で区切らないので、「週次ミーティング議事録」はひとかたまりの語として索引され、「議事録」という部分では一致しません。「見積」が当たったのは「見積は」の「は」の前で、「A社」は「A社の」の助詞の前で、たまたま切れ目ができていたからです。
運用での回避策(実測で効いたもの)
- タイトルは検索されたい単位で区切る:「2026-09-03 週次ミーティング 議事録」のように、語の間に空白を入れる。これだけで「議事録」が当たります
- 本文の冒頭に「キーワード行」を置く:ページ先頭に「関連: 議事録 / 営業部 / A社 / 契約更新」のような1行を書く。人にも検索にも効きます
- 顧客名・案件名は英数字や記号で囲む:「A社」「【契約更新】」のように、日本語の連続を切る
- スペースとページ階層で辿れる設計にする:検索に頼りきらず、部署スペース → 種別(手順書/議事録/顧客)→ ページ、と左のツリーで到達できる形にしておく
これは Docmost 固有というより、PostgreSQL の全文検索を日本語で使う OSS 全般に共通する話です。将来のバージョンで改善される可能性はありますが、導入時点では運用で補うのが現実的です。
移行・入出力(無料版でどこまで)
- ページの書き出し:Markdown/HTML で1ページずつ。スペース単位なら zip で一括
- 取り込み:Markdown ファイルのインポートは無料版で使えます(実測で成功)。Notion からは「Markdown & CSV でエクスポート」した zip を解いて取り込む流れ、Confluence からは「HTML でエクスポート」して変換するか、有料版の直接インポートを使います
- つまり Notion → Docmost は無料版で完結、Confluence → Docmost は手間か有料版のどちらか、という整理になります
会社で使うときの勘所(実測から)
バックアップは3か所。PostgreSQL のダンプ(docker compose exec db pg_dump -U docmost docmost、デモの3ページで124KB)、添付ファイルのボリューム docmost、そして Redis(通知やセッション用なので、失っても致命的ではない)。日次で前の2つを取れば復旧できます。
スペース=部署、ページ階層=種別。スペースにメンバーと権限が付くので、部署をスペースにするのが自然です。その下に「手順書」「議事録」「顧客」の親ページを作り、その配下に増やしていくと、検索の穴を階層で補えます。
招待制で運用する。最初の管理者以外は「ユーザーを招待」で追加します。SMTP を設定しておかないと招待メールが飛ばないので、立てた直後に設定します。
添付の上限。既定のアップロード上限は環境変数 FILE_UPLOAD_SIZE_LIMIT で変えられます。リバースプロキシ側(nginx の client_max_body_size)も合わせて上げます。
更新。docker compose pull && docker compose up -d。メジャー更新の前に pg_dump を取ってからにします。
まとめ
- Docmost は Notion/Confluence の「階層+同時編集」を、自社サーバーで、無料版のまま再現できます。3コンテナで数分です
- 日本語UIは100%で、設定1か所で完全に日本語になります
- ただし日本語の全文検索は複合語を拾えないことがあります。タイトルに空白を入れる・キーワード行を置く・階層で辿れるようにする、の3点で実用になります
- 移行は Notion からなら無料版で完結。Confluence からは有料版か手作業の変換です
導入から社内展開までを、当社の手順書とテンプレート(スペース設計・議事録/手順書テンプレ・検索を効かせる書き方・移行手順・バックアップ)にまとめた導入キットも用意しています。詳しくは Docmost の紹介ページ をご覧ください。
参考
- 本家: https://github.com/docmost/docmost (AGPL-3.0、
ee/配下のみ別ライセンス) - 公式サイト・料金(Community/Business/Enterprise の境界): https://docmost.com/pricing
- 関連記事: Vikunja(タスク管理)の導入と翻訳の穴を埋めた記録 / Zammad の日本語を23%から100%にした記録