バイブプロトタイピングとは何か? 設計書から、動くものを1営業日で
「バイブプロトタイピング」と聞くと、雰囲気で適当に作ることのように見えるかもしれません。ここでいうバイブプロトタイピングは、その逆です。
設計書という土台を先に固め、その上でAIとの対話によって実装を一気に進め、動くものを触りながら要件を確かめていく方法を、私たちはバイブプロトタイピングと呼んでいます。
バイブコーディング、バイブトレーディングに続く、エクスブリッジの3つめの実践です。
何が問題だったのか
システム開発の相談で、いちばんよく聞く言葉があります。
「要件はまとまった。でも、これで本当に業務が回るのか、動かしてみないと分からない」
そのとおりです。仕様書を100ページ読んでも、画面を10秒触ったときに分かることには勝てません。にもかかわらず、従来はこの確認のために数百万円と数か月が必要でした。動くものを見た時点で「思っていたのと違う」と気づいても、もう引き返せない。
手戻りが一番高くつくのは、作り込んだ後です。
バイブコーディングだけでは足りない
では、AIに全部書かせればいいのか。実際にやってみると、そう単純ではありません。
AIに一から書かせれば、動くものはできます。ただし、あとから手が入れられる作りになるとは限りません。
- データの持ち方が場当たりで、項目を1つ増やすだけで複数箇所が壊れる
- 画面と処理が絡まっていて、片方だけ差し替えられない
- 同じ処理が3箇所に散らばっていて、直したつもりが直っていない
こうなると、次の一手で詰まります。プロトタイプとしては動いているのに、育てられない。これは「AIが悪い」のではなく、土台の設計を誰もやっていないという状態です。
バイブプロトタイピングの3つの原則
1. 土台の設計だけは人がやる
データ構造とアーキテクチャは、エンジニアが決めます。何をどう持つか、どこで境界を切るか。ここは判断であって、生成ではありません。
その上で、実装をAIとの対話で進めます。設計された土台の上でなら、AIコーディングは的を外しにくくなります。指示の解釈がぶれる余地が減るからです。
これは納品後にも効きます。お客様がご自身でバイブコーディングを続けるとき、土台があるかないかで結果が変わります。
2. 触ってから決める
先に費用を払って、あとから「違った」と気づく順番をやめます。
デモ環境を先に用意し、実際に触っていただいてから発注を決めていただく。「これは違う」と早く分かること自体が価値です。10万円で違いが分かるなら、それは失敗ではありません。
3. 公開できる範囲で作る
私たちは、生成された設計書もプロトタイプのコードも、オープンソースと同じ扱いにしています。納品コードは MIT License で提供し、お客様は商用利用・再販・改変・再配布を自由に行えます。当社も同じものを利用します。
この形にしている以上、秘匿しておきたい独自のアイデアは、この進め方には向きません。その場合は秘密保持契約を結んだうえでの提供を、有償のオプションとして承っています。速さと引き換えに何を差し出しているのかは、隠さず書いておきます。
「他社に発注するため」に使ってもいい
このやり方は、本開発を私たちに発注していただくことを前提にしていません。
動くプロトタイプがあると、システム会社との認識のズレが大幅に減ります。「この画面のこの動き」と実物で話せるからです。見積もりの根拠にもなり、結果として他社への発注も含めた全体のコストが下がります。
ソースはお客様のGitHubに入るので、どこにでも引き継げます。社内の稟議や経営層への説明でも、動く画面は資料より伝わります。
3つの「バイブ」の関係
| 対象 | 人がやること | AIがやること | |
|---|---|---|---|
| バイブコーディング | ソフトウェア全般 | 何を作るかの判断 | 実装 |
| バイブトレーディング | 取引戦略 | 仮説と資金管理の判断 | コード化と検証 |
| バイブプロトタイピング | システムの土台 | アーキテクチャの設計 | 実装 |
共通しているのは、AIに任せる範囲と、人が持つ判断を分けていることです。全部任せると速いが育たない。全部自分でやると遅い。その境界をどこに引くかが、それぞれの実践の中身です。
関連書籍『AIと作る自動取引ボット入門』
『AIと作る自動取引ボット入門:バイブコーディング×バイブトレーディングで暗号資産・FX戦略を育てる』(小嶋 篤 著・Kindle)は、非エンジニアがAIと対話しながらシステムを組み上げ、運用するまでを、実際の失敗と学びから全49章にまとめた実践書です。
VPSの契約とAI環境の導入から、構築、バックテスト、過学習の防ぎ方、運用監視まで「画面通りに進めば動く」粒度で書いています。Kindle Unlimitedなら追加料金なしで読み放題です。
この記事で書いた「土台の設計だけは人がやる」という結論は、この本に記録した実運用での経験そのものから来ています。ご自身で手を動かしたい方は、こちらから始めてください。
サービスとして試す
バイブプロトタイピングを、そのままサービスにしました。
Kurage バイブプロトタイプ制作サービス は、設計書をお預かりして最短1営業日(繁忙期・長期休暇でなければ1週間以内)でデモを構築し、触っていただいてから発注いただく形です。1回10万円(税別)、納品はお客様のGitHubリポジトリです。
設計書は Kurage Architect でAIと対話しながら作れます。すでにお持ちの設計書でも、記述レベルが同程度であれば承ります。
まとめ
バイブプロトタイピングは、雰囲気で作ることではありません。
人が土台を設計する → AIが実装する → 動かして確かめる → 手元で育てられる形で残す。この順番を守ることが中身です。
AIは実装の速度を上げます。しかし、何をどう持つかという判断は代わってくれません。そこを人が引き受けるからこそ、出来上がったものが「動くけれど育たないもの」にならずに済みます。
まずは、動くものを1つ手に入れるところから始めてください。
