入札11万円のキーワードを見つけたので、AI名刺解析を1日で作った——Sansanが君臨する市場に買い切り55,000円で入る実測記録
名古屋でAIシステム開発の会社をやっています。今日も新製品を1日で作って出品したので、意思決定の起点になった数字から全部書きます。製品はAI名刺解析・名刺台帳「Kurage AI Meishi Analysis(kaima)」——スマホで名刺を撮って投げると、AIが読み取って下書きに登録し、人が原本と見比べて承認した分だけ台帳に載るシステムです。
起点:入札111,861円という数字
「脱・有料ソフト」シリーズのキーワード実測をしていて、桁のおかしい数字に出会いました。Googleキーワードプランナーで「sansan 名刺 管理 料金」の広告入札上限が111,861円。当社がこのシリーズで測ってきた中の最高記録です(それまでの最高は「電子契約 無料」の6,281円でした。その18倍)。
1クリックに11万円払ってでも会いたい検討者がいる——名刺管理は、それほど高い支払い意思が実証されている市場だということです。同時に、この入札額では広告の正面戦は不可能だとも確定しました。
もうひとつ具体的な価格も見つけました。kintone向けの「AI名刺解析プラグイン」(NovelWorks社)は月額20,000円で1,000枚まで、超過100枚ごと300円という公開価格です。一方、いまのマルチモーダルAIが名刺1枚を読み取る原価は1円未満。この差額が、そのまま製品の入る隙間です。
作る前に、AI OCRの「本当の難しさ」を実測した
名刺のAI読み取りは昔から「難しい」と言われる領域なので、作る前にローカル12Bモデル(gemma系)とクラウド最上位モデルで読み取り比較をしました。テスト名刺は横書きビジネス名刺と縦書きの料亭名刺、それぞれ「きれいな画像」と「劣化画像」(傾き3度+ピンぼけ+影+低解像度=スマホ撮影の失敗を模擬)の4条件です。
- きれいな画像なら両者ほぼ満点。差がつきません
- 劣化画像で差が激変——ローカル12Bは約9箇所の誤り(役職の誤読・氏名の誤字・郵便番号の数字違い・名刺に無いふりがなの創作)。最上位モデルは2箇所
- 最大の発見:画質が悪いとAIは「間違える」のではなく「欠けた文字を欠けたなりに忠実に読む」。文字の下端が欠けた画像では、
sayuri@...jpをsavuri@...ipのような「実在しそうな別のアドレス」として自信満々に返してきます
つまりAI OCR名刺の敵はモデルの精度ではなく、①勝手な正規化(旧字体の髙→高) ②読めない項目の創作 ③撮影品質 ④自信満々の誤読の4つ。ここから設計が決まりました。
設計:読み取りはAI、確定は人
前日に作った入力ゼロCRM(kcrmagent)と同じ原則です。
- AIの読み取りは必ず「下書き」で止まる。台帳に書けるのは人の承認だけ(コード内の宣言関門が全入口を裁く)
- 承認画面は原本画像と読み取りフォームを並べて表示——旧字体も誤読も、本人の目が10秒で捕まえる
- AIに自己採点させない——メールアドレスは形式チェックに加えてドメインのDNS実在確認まで機械検証。「実在しそうな誤読」はここで警告になります(実際にデモで架空ドメインに警告が出ます)
- 台帳の芯はSansanの本丸と同じ:名寄せ(表記ゆれ吸収の同一人物判定)、役職の変遷履歴(昇進が見える)、接点記録(「この会社、うちの誰が知ってる?」に即答)
構成は1ファイルPHP+SQLite。レンタルサーバーで動き、AIはOpenAI互換のvision対応API(BYOK)を設定するだけです。
成果物(今日から使えます)
- デモ(30秒・サンプル名刺で試せます): https://proto.exbridge.jp/kaima/ (パスワード: demo2026)
- 解説ページ: 名刺管理を安く——Sansanのような月額を払わずに
- 完成品を買う: Kurage App Store・買い切り55,000円税込
- 内製化の土台にする: AI OCR名刺管理の注意点と開発手順書(Brain・55,000円)——上の実測データの全公開に加えて、設置手順・承認型設計の写経ポイント・カスタマイズ用AIプロンプト4本(項目追加/名刺の山の一括取り込み/kintone書き込み連携)を収録。Claude Code等のAIエージェントと一緒に、自社のAI OCR名刺管理システムを育てるための土台です
- ソースコード(MIT): github.com/katsushi2441/kaima
- 自社仕様化を任せる: バイブプロトタイピング(110,000円税込〜)——項目カスタマイズ・既存データ移行・kintoneや基幹システムへの連携まで。入力ゼロCRMと組み合わせれば「名刺→顧客台帳→日報→商談」が月額なしの一本線になります
考察:AIエージェント時代の製品は「完成品」と「土台」の2形態で売れる
今回の売り方は2段構えにしました。完成品(kappstore)と、内製化の土台としての開発手順書(Brain)——同じ55,000円です。ソースコードはMITで公開しているので、価値の本体は「検証済みの手順と実測ノウハウ」の側にあります。AIエージェントで内製できる時代の製品は、モノではなく「確実にたどり着くための地図」が商品になる——kvgwc・kcrmagentから3回続けて、この型で手応えがあります。
数字はいつもの実験ダッシュボードで公開しながら育てます。入札11万円の市場に、広告費ゼロ・SEO/AEOと実測記事だけでどこまで食い込めるか——結果もここで報告します。