業務OSSカタログに、もう1つ入口を足した——同じOSSを「名前から」と「AIでできることから」の両方で引けるようにした話
名古屋でAIシステム開発の会社をやっています。今日は、同じ中身に、入口をもう1つ足した話です。
結論から書くと、AIでできること一覧というページ群を1,216枚作りました。中身は既存の業務OSSカタログと同じOSSですが、引き方だけが違います。カタログを畳んだわけではなく、いまも件数を増やしている最中です。
発端: OSSの名前を知らない人は、カタログを引けない
もともと業務OSSカタログを運用しています。世界中で使われている業務用オープンソースを、用途・ライセンス・日本語対応の実測つきで並べたものです。47件から始めて、いまは1,123ページ。生成は現在も進行中で、対象1,929件のうち1,535件まで来ています。
このカタログ自体は手応えがあります。1件1ページで、ライセンスも日本語ロケールの実ファイル数も実際に数えている。薄いページではありません。これは今後も伸ばします。
ただ、構造上どうしても「OSSの名前を知っている人」が入口になります。
- Ghost
- Metabase
- paperless-ngx
- Krayin
これらは、知っていれば強力な選択肢です。しかし中小企業の経営者が「Ghost」で検索するでしょうか。しません。そもそもGhostという名前を知らないから困っているわけです。
カタログが悪いのではなく、入口が1つしかないのが惜しい。そう考えました。
実測: 経営者は何と入力しているのか
推測で作らないために、Google広告のキーワードプランナーで日本の実検索数を取りました。以下は実測値です。
| キーワード | 月間検索数 | 競合 |
|---|---|---|
| ai デメリット | 2,400 | 低 |
| ai メリット | 1,900 | 低 |
| ai 活用 事例 | 1,600 | 中 |
| ai 業務効率化 | 1,300 | 中 |
| ai でできること | 880 | 低 |
| ai できること | 880 | 低 |
| ai ができること | 590 | 低 |
| 生成ai できること | 590 | 低 |
| ai 何ができる | 480 | 低 |
| ai で何ができるか | 110 | 中 |
一方で、こちらが取りたかった語はこうでした。
- 「名古屋 AI 導入」系: 月100回に届かず、データとして拾えない
- 「ai 導入 支援」: 月390回だが競合が高(大手が入札している)
つまり、地域名を付けた語にはそもそも需要がなく、需要がある語は「AIで何ができるのか」「メリットとデメリットは何か」という、まだ何も決めていない段階の問いでした。
そして重要なのは、この帯の競合がほぼ「低」だったことです。事例紹介やニュース記事は大量にありますが、「で、うちの会社の何が解決するのか」に具体物で答えているページは少ない。ここは空いていました。
だから、入口をもう1つ足した
やったことは単純です。カタログはそのまま伸ばしながら、同じOSSを「そのOSSは何か」ではなく「その業務をどうやるか」の側からも引けるようにしました。どちらかに寄せるのではなく、両方持つという判断です。
| 業務OSSカタログ | AIでできること | |
|---|---|---|
| URL | kurage.exbridge.jp/oss/ | exbridge.jp/ai-system/ |
| H1の例 | Ghost | ブログ運営を、Ghostで実現する。 |
| 入口 | OSSの名前・カテゴリ | 社内Wiki、請求書の発行、在庫管理… |
| 誘導先 | OSSカスタマイズ | AI導入お試し |
同じOSSを扱いますが、H1もタイトルも見出しも本文も誘導先も全部違います。重複コンテンツにならないよう、ここは意識的に分けました。片方が育てばもう片方にも人が流れるように、相互にリンクしています。
構成は次のとおりです。
- 詳細ページ 1,120枚(OSS 1件 = 1ページ)
- できること別の一覧 96枚
- トップ 1枚
- 合計 1,217 URL
失敗1: 27分類では、誰も検索しない言葉になった
最初は27分類で作りました。すぐに間違いだと分かりました。
分類名が「社内ナレッジ検索・マニュアル整備」のような複合語になってしまい、これは誰も検索しない言葉です。人が入力するのは「社内wiki」「マニュアル 作成」であって、その2つを足した言葉ではありません。
そこで、生成済みデータに入っている用途の記述5,252種を数え直し、実際に出てくる業務語を111分類に割りました。掲載が5件未満だと薄いページになるので、そこは作らず、公開は96分類です。
168 サイト・コンテンツ管理 113 社内ナレッジ検索
102 ECサイト・ネット販売 95 プロジェクト管理
75 AIエージェント組み込み 71 請求・見積・経費
…17グループ・96分類
失敗2: Ghostが「メール配信」に分類された
分類は正規表現で当てています。当初は「用途の記述に何回出てきたか」で決めていました。
これでGhostが「メール配信・メルマガ」になりました。理由は明快で、Ghostの要約が「モダンな出版や会員制、ニュースレター配信のための独立した技術です」だったからです。語の数だけ見れば、メルマガが勝ってしまう。
しかし「Ghostで検索する人」も「Ghostを提案される人」も、求めているのはブログです。
直し方は、要約と説明を3倍で重み付けしたうえで、カタログ側が独立に付けている category が一致したら加点するというものにしました。Ghostは category=cms、keywords に「ブログ」「CMS」が入っています。だから「ブログ運営」になる。
結果はこう変わりました。
| OSS | 修正前 | 修正後 |
|---|---|---|
| Ghost | メール配信・メルマガ | ブログ運営 |
| WordPress | — | コンテンツ管理(CMS) |
| Grafana | — | データの可視化 |
| paperless-ngx | OCR | 文書管理・ファイル共有 |
主題の種類は27→85種に増え、最大でも157件(修正前は449件が1分類に集中)になりました。
なお、category が devtools(512件・最多)のものは加点対象から外しています。中身がAI基盤から監視まで広すぎて、加点すると「AIエージェントの構築」が全部「開発作業の効率化」に流れてしまったためです。
失敗3: 量産したページが60点だった
自社のAI検索対応監査ツールで実測したところ、一覧ページが総合60点でした。内訳を見ると原因は明確で、
- schema 2点 … ItemListとBreadcrumbListしかない
- brand_entity 2点 … 誰が発信しているのか機械が確認できない
- 数字がゼロ
AI検索は、発信元を確認できないページを引用しません。そこで実在の情報だけで補強しました。
- Organization構造化データを全ページに(所在地・法人番号・sameAs。自社トップと同じ実在の値。発明しない)
- 一覧ページに実測データ(掲載件数、日本語ロケールなしの件数と割合、スター中央値、多いライセンス、出所の明記)
- FAQPage 4問、dateModified、会社概要リンク、文責
結果です。
| ページ | 修正前 | 修正後 |
|---|---|---|
| トップ | 61 | 83 |
| 一覧(請求書の発行) | 60 | 79 |
| 詳細(Ghost) | 69 | 78 |
| 参考: 手書きのAI開発支援ページ | 68 | — |
量産したページのほうが、手で書いたページを上回りました。 AEOは86〜89(excellent)です。
入口を「AI導入で何ができるか」に作り替えた
最後に、トップページ自体を書き直しました。当初は「やりたいことから探す」というOSSディレクトリでしたが、これでは経営者の問いに答えていません。
いまの見出し構成はこうです。
- AIでできることとは?(読む・写す/探す・答える/流す・記録する/集める・見せるの4分類)
- AI導入で解決できる経営課題は?(実際に相談を受ける12の言い方から、該当する用途ページへ)
- AI導入は、利益にどうつながるのか?
- AI導入のメリットとデメリットは?(実測で最大需要。デメリットも書く)
- 何から始めればよいですか?/AIを使わないほうがよい業務は?
3番目について、当社の考えを書いておきます。作業時間が減っただけでは利益は動きません。 減った時間の行き先を決めて初めて、人が価値を生む仕事に移り、そこで売上が動きます。だから最初のヒアリングで「削減した時間を何に使うか」を先に決めます。ここを飛ばすと「効率化したのに利益が変わらない」が起きます。
なお、効果を数値で保証する書き方はしていません。 業種と業務で差が大きく、根拠のない数字を掲げたくないためです。代わりに、初日3時間の無料ヒアリングで実際に測り、見込みが立たなければ「作らないほうがよい」と申し上げます。
実際に使ってみてください
- AIでできること一覧 … やりたいことから探す。96分類・1,120件
- 業務OSSカタログ … OSSの名前・カテゴリから探す。ライセンスと日本語対応の実測つき
そこから先の選択肢も、目的別に分かれています。
- AI導入お試し実験 … 名古屋市内限定。1日3時間×5日間の計15時間・税別15万円で、現場で使えるシステムを1つ以上作ります。初日3時間のヒアリングと提案は無料
- OSSのバイブコーディング・カスタマイズ … 土台にするOSSが決まっている場合。標準デモを触り、Zoomで要件を決めてから注文。合計10時間以内・税込110,000円から
- バイブプロトタイプ制作 … 作るものが決まっている場合。動くデモを先に確認してから発注を判断できます
- Kurage App Store … 買い切りの業務アプリ。月額課金なし、ソース同梱
- AI開発・活用支援 … 何から手を付けるか決まっていない段階の相談窓口
まとめ
- 入口は1つに絞らなくていい。 同じOSSを、名前からと「できること」からの両方で引けるようにした。カタログは今も生成中で、増えた分は自動で両方に載る
- キーワードは実測してから決める。 「名古屋 AI 導入」は月100回に届かず、「ai 何ができる」は月480回・競合低だった
- 分類は機械に任せきらない。 Ghostが「メール配信」になった。独立した別の情報(category・keywords)を加点に使って直した
- 量産ページこそ、発信元を機械が確認できる状態にする。 Organization構造化データと実測値を入れて、60点が79点になった
数字は実測しながら、このブログで報告していきます。