日本の買い切りツールを英語圏で売る——Whop出品の実務と、翻訳すべきだったもの
名古屋でAIシステム開発の会社をやっています。英語圏のマーケットプレイス Whop に自社の買い切りツールを出品し、マーケットプレイスの審査を通過しました。この記事は、日本で作ったソフトを英語圏で売るときに実際に必要だった作業の記録です。制作の経緯はnoteに書きました。
なぜ今、Whopだったのか
Whopが2026年8月27日に「Business Blueprints」を発表しました。X上で27万回表示、ブックマーク827件(いいね579件より保存が多い=実行意図が高い層に届いている)。
調べると、Whopは直近1か月ずっとAIエージェントに賭けていました。
- 「どんなエージェントでもWhop CLIでBlueprintを作れる」
- 「Whop APIは1日4,350万リクエスト」(人気のエージェント紹介つき)
- 「中央値の新規ビジネスは6日で初売上」
当社にはMCPサーバーを同梱した買い切りのDB管理ツールがあり、この文脈と正面から噛み合うと判断しました。
1. 在庫23本から1本を選ぶ
Whopの客層は英語圏の個人事業主・クリエイター・副業層で、日本のB2B業務システムとは客層が違います。この基準で仕分けたところ、17本は「英語版を作っても売れない」と判断して外しました。
| 外した理由 | 該当製品 |
|---|---|
| 日本の制度に依存 | 請求書・領収書・注文決済(インボイス制度) |
| 日本の商習慣に依存 | 顔打刻の勤怠、名刺管理、引継ぎ管理 |
| 日本語化がウリ | OSS導入キット5本(英語圏では価値がまるごと消える) |
残したのは「AIエージェントにデータベースを安全に触らせるツール」。競合が薄く、中身がコードと設定ファイルなので日本語依存が最小という点が決め手でした。
2. 翻訳が必要だったのは商品説明ではなく、製品そのもの
ここが最大の学びです。
商品説明を英語で書いている途中で気づきました。製品自体のエラーメッセージが日本語のままでは、売り物になりません。 買った人が動かして最初に見る文言が「その表は許可されていません」では、返金されて当然です。
そこで本体とMCPサーバー2本に言語切り替えを実装しました。
define('KDBA_LANG', 'en'); // 設定に1行
claude mcp add kdbagent -e KDBA_MCP_LANG=en -- php kdbagent_mcp.php
既定は日本語のままにしたので、既存の日本語ユーザーには一切影響しません。MCPは子プロセスの本体にも言語を伝播させ、拒否メッセージまで英語になることを実測しました。
This table is not allowed: sqlite_master
Deleting is not allowed for this table
商品説明に「Tested(テスト済み)」と書く以上、実際に出る文言をそのまま引用するのが誠実だと考え、この出力を説明文に載せています。
3. 「買えるのに届かない」を避ける(配布システムを自前で作る)
Whop CLIには商品に配布ファイルを添付する機能がありません。管理画面からの投入は過去に詰まった経路です。
そこで 購入はWhop、配布は自社 という分担にしました。
- 購入されるとWhopが
payment.succeededを送ってくる - 署名を検証し、購入者ごとのダウンロードトークンを発行
- ダウンロードリンクをメールで送信
- トークンなしでは配布物を渡さない(zipへの直リンクも遮断)
署名検証は Standard Webhooks 方式(HMAC-SHA256)で、以前Whop連携を作ったときの実装を踏襲しました。テスト購入を流して全経路を実測しています。
| 検証項目 | 結果 |
|---|---|
| 署名なしのリクエスト | 401 拒否 |
| 正しい署名でのテスト購入 | 200・メール送信成功 |
| 発行トークンでのダウンロード | 200・zip取得 |
| zipへの直リンク | 403 拒否 |
| トークン失効後 | 403 拒否 |
なお Whop CLIのwebhook作成にはAPIキーログインが必要でした(OAuthトークンでは403)。whop login --api-key で通ります。
4. 価格は市場に合わせる
日本のKurage App Storeでは55,000円(約$350)で売っていますが、Whopで実際に動いている価格帯は$25〜$90です。英語圏の個人開発者に$350は届きません。
そこで $79の買い切りにしました。マーケットが違うので、日本国内の価格統一とは別問題として整理しています。Whopの現地通貨表示機能により、日本から見ると¥12,848と表示されます。
結果と、残っている課題
審査を通過し、マーケットプレイスに掲載されました。whop.com/discover/search?q=kurage で検索すると3件中2位に出ます。
正直に書くと課題が残っています。 「database agent」(28件ヒット)や「mcp」(29件ヒット)といった、買い手が実際に打つ検索語ではまだ上位に出ません。自社ブランド名でしか見つからない状態です。タイトルを「MCP Database Access for Claude Code & Codex」と検索語寄りに変え、ラベルも設定したので、ここからの変化を見ていきます。
買う・作ってもらう
- 英語版(Whop・$79買い切り)
- 日本語版(Kurage App Store・55,000円)
- 設置と権限設計の全手順(Brain)
- バイブプロトタイピング(最短1営業日・税込110,000円〜) — 自社システムのAIエージェント対応を作ってほしい場合
- 無料相談(Zoom可)
日本で作ったものを英語圏に出すとき、翻訳が必要なのは商品説明ではなく製品そのものでした。当たり前のことですが、やってみるまで実感がありませんでした。