LibreDeskを日本語で使う——メール・チャット・ヘルプセンターが1つになったオープンソースのヘルプデスク
名古屋でAIシステム開発の会社をやっています。LibreDesk というオープンソースのヘルプデスクを日本語で使えるようにしたので、何ができるソフトなのかを紹介します。
GitHubスター2,861、Go製、AGPL v3。Zendesk・Intercom・Front あたりの置き換えを狙った製品です。
1つの受信箱に、全部集まる
LibreDesk の中心にあるのはオムニチャネル受信箱という考え方です。
support@に届いたメール- 自社サイトに置いたライブチャット
この2つが、同じ画面の同じ一覧に並びます。担当者はチャネルを意識せず、上から順に返していけます。メールはメーラー、チャットは別ツール、という分断が起きません。
チャットへの返信も、この受信箱から出ます。専用の管理画面へ移動する必要はありません。
ヘルプセンターが標準で付いている
よくある質問を公開するナレッジベースが最初から入っています。
- コレクション(分類)と記事の階層構造
- 検索
- 多言語対応(記事ごとに言語を持てる)
- 見た目のカスタマイズ
問い合わせを減らしたいなら、ここが効きます。別サービスを契約せずに済むのは大きい違いです。
AIが一次対応して、無理なら人に渡す
AIアシスタントが、ヘルプセンターの内容を根拠にライブチャットへ自動応答します。答えられないときは人間に引き継ぎます。
「AIが勝手に答えて事故る」形ではなく、自社のナレッジベースに書いてあることだけを答える設計です。根拠のない回答が出にくくなります。
担当者側には Agent copilot があります。受信箱を離れずに、
- 返信の下書きを作る
- 長いやり取りを要約する
- ナレッジベースから答えを探す
ができます。
運用に必要なものが揃っている
小さなツールではなく、チームで回すための機能が入っています。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| SLA管理 | 応答時間の目標を設定し、違反しそうな案件を通知 |
| 自動割り当て | 担当者の負荷や条件に応じて自動で振り分け |
| オートメーション | 条件に応じてタグ付け・担当変更・振り分けを自動実行 |
| マクロ | よく使う返信を保存。送信・タグ付け・担当割り当てをまとめて実行 |
| CSAT | 対応完了後に満足度アンケートを自動送信 |
| 分析 | 応答時間、解決率、担当者ごとの稼働 |
| 権限管理 | 役割ごとに操作単位で権限を設定 |
| カスタム属性 | 契約プラン、初回購入日など任意の項目を顧客・会話に追加 |
| SSO | Google、Microsoft、OIDC に標準対応 |
| API | 外部システムとの連携 |
タグ・カスタムステータス・スヌーズ・全文検索といった、受信箱を散らかさないための道具も一通りあります。
日本語で使えるようにしました
ここが今回の本題です。
UIの1,536項目すべてを日本語にしました。受信箱、ヘルプセンター管理、SLA設定、権限設定、レポートまで、管理画面の隅々まで訳してあります。
日本語版のソースはそのまま公開しています。
本家にも提出済みです。 abhinavxd/libredesk#550 がマージされれば、公式の配布物をそのまま使うだけで日本語になります。
なお、本家に元々入っていた日本語には、画面に {name} のような記号がそのまま表示される箇所が25ありました。全部直したうえで提出しています。訳しただけでなく、実際に起動して画面を確認しています。
始めるのに必要なもの
VPSが要ります。 「single binary」と書かれていますが、実際には PostgreSQL と Redis が必要です。月数百円の共有レンタルサーバーでは動きません。
メモリは2GB以上を見てください。Docker が使えれば、次の1行で立ち上がります。
docker compose -f docker-compose.jp.yml up -d --build
初回はビルドに10分前後かかります。起動後、翻訳が正しく配信されているかはコマンドで確認できます。
$ curl -s http://127.0.0.1:18355/api/v1/lang/ja-JP
globals.messages.add = 追加
globals.terms.read = 既読
共有サーバーしか無い場合
LibreDesk は動きません。その場合は FreeScout のほうが適しています。当社で日本語導入キットを出しています。
| FreeScout | LibreDesk | |
|---|---|---|
| 動く場所 | 共有レンタルサーバー可 | VPS必須 |
| 必要なもの | PHP + MySQL | Go + PostgreSQL + Redis |
| ライブチャット | なし | あり |
| ヘルプセンター | なし | あり |
| AI一次対応 | なし | あり |
| ライセンス | AGPL v3 | AGPL v3 |
メール対応だけで足りるならFreeScout、チャットとヘルプセンターまで欲しいならLibreDesk、という分かれ方です。LibreDesk のほうが機能は広く、その分サーバーの要求も上がります。
入手経路3つ
経路1: 無料(GitHub・AGPL v3)
日本語版のソースです。翻訳の中身も確認できます。
経路2: 導入手順書 5,500円
構築して踏んだ落とし穴をまとめました。ポート衝突で起動しない件、日本語が本当に出ているかの確認方法、設定を1行間違えるとライブチャットだけ動かなくなるnginx設定など。ソフト本体は含みません(無料で入手できます)。買っていただくのは動く状態にするまでの時間です。
経路3: 構築を任せる 110,000円〜
ライセンスについて
AGPL v3 です。自社で使う分に制限はありません。改変してネットワーク越しにサービス提供する場合は、利用者へのソース提供義務が生じます。SaaSとして他社に提供する予定がある場合は、事前に条文を確認してください。
まとめ
- メール・ライブチャット・ヘルプセンターが1つの受信箱にまとまる
- SLA・自動割り当て・マクロ・CSAT・権限管理まで、チーム運用に必要なものが揃っている
- AIがヘルプセンターを根拠に一次対応し、無理なら人に渡す
- UIは1,536項目すべて日本語化済み(本家へも提出)
- VPSが必要。共有サーバーではFreeScout