「通報アプリ」は検索されていなかった——名古屋市の通報窓口を1つの入口にまとめる『Kurage 通報先ナビ』を1日で作って出品するまで
名古屋でAIシステム開発の会社をやっています。
昨日、名古屋市の通報先を案内するシステム『Kurage 通報先ナビ(kecnavi)』を作って公開し、今日、買い切り版を出品しました。作る前に測ったこと、作りながら見つけた制約、設計の判断を、順番に書きます。
- 公開: https://kurage.exbridge.jp/kecnavi.php/
- 買い切り版: Kurage App Store
- 議員事務所4点セットとしての位置づけ: note
1. 測ったら「通報アプリ」は検索されていなかった
FixMyStreet(英国発の住民通報OSS)を名古屋市向けに立てようと考えて、先に検索需要を測りました。
| キーワード | 月間 | 競合指数 |
|---|---|---|
| 不法投棄 通報 | 1,300 | 0 |
| 名古屋市 土木事務所 | 260 | 5 |
| ◯◯区 土木事務所(天白・名東・中村…) | 各50 | 0 |
| 道路 陥没 通報 | 110 | 0 |
| 道路 損傷 通報 アプリ | 50未満 | — |
人は通報の仕組みを探していません。「不法投棄はどこに通報するのか」「うちの区の土木事務所」を探しています。ここでFixMyStreetを市の代替として立てる案は捨てました。
2. 名古屋市は、すでにやっている
名古屋市には公式LINEの「道路・公園損傷通報」があります。道路の損傷・街路灯・街路樹・公園施設を写真と位置情報で通報でき、対応状況はWebで公開されます。ただし市自身が明記している制約があります。
- テキストを送れない(写真と位置情報のみ)
- 職員の確認は平日8:45〜17:15、緊急は電話
- 市から個別返信はしない
- 不法投棄は対象外(専用FAX・環境事業所・別アプリに分散)
つまり「市と同じ土俵で通報を受ける」のではなく、分散した窓口を1つの入口にまとめるのが勝ち筋でした。困りごと11種と、住所から区を判定して土木事務所・環境事業所・区役所を出す2つの入口にしました。
3. 市のサイトの文章は転載できなかった
データを集める段階で、名古屋市サイトの再利用規約を読みました。本文は改変不可・引用のみ。政府標準利用規約やCC BYは採用されていません。
一方で、BODIK(CKAN)に出ている名古屋市のオープンデータ618件のうち199件はCC BY 4.0でした。そこで役割を分けました。
| 情報 | 出どころ | 扱い |
|---|---|---|
| 土木事務所16件の電話 | 緑政土木局「連絡先一覧」 | 番号という事実を転記し、出典リンク |
| 環境事業所16件の電話・住所・受付時間 | 「各区の環境事業所」 | 同上 |
| 区役所・各事務所の所在地と座標 | オープンデータ「施設カルテ」(CC BY 4.0) | 加工して利用 |
| 全国共通番号(#9910・#9110・188・189・上下水道局) | 各省庁・局の公式ページ | 事実を転記し、出典リンク |
| 説明文 | — | すべて自前で書く |
電話番号・住所・受付時間は著作物ではないので転記できます。説明の文章は一行も写していません。同梱のSETUP.mdにも「自治体サイトの文章を転載しないこと」を明記しました。
4. 設計の判断
緊急連絡先を最上段に固定。 110/119はどのページでも一番上に出し、「このナビは案内であって通報の代行ではない」と書いています。
住所→区の判定。 国土地理院の地名検索APIで住所を解決し、ラベルの「名古屋市◯◯区」を最優先で読みます。無ければ区役所の座標に最も近い区で補い、その旨を画面に出します。
プロキシ越しでも直アクセスでも動く。 公開はレンタルサーバーの透過プロキシ(/kecnavi.php/…)経由です。内部リンクとAPIのパスが1階層ずれるので、X-Forwarded-Host の有無で接頭辞を切り替えます。前日に津波マップの地域ページで同じ罠を踏んでいたので、今回は最初から入れました。
他の自治体はJSON2ファイル差し替え。 wards.json(区ごとの窓口)と contacts.json(困りごと別の連絡順)だけを差し替えれば別の自治体で動きます。区の無い自治体は wards を1件にすれば市全体の窓口になります。
検索の受け皿としての構造。 困りごと別11ページ・区別16ページを個別URLで持ち、title・description・h1に検索語を置き、BreadcrumbList と FAQPage の構造化データ、GA4、OGPを全ページに入れました。sitemap登録・IndexNow送信・GSC再送信まで初日にやっています。
5. 出品まで
買い切り版(税込55,000円・ソース同梱・MIT)を Kurage App Store に出品しました。同梱物は本体・名古屋市の実データ2ファイル・透過プロキシ・systemdユニット・SETUP.md。データベース不要、外部の有料APIも不要なので追加費用は0円です。
6. 誰が使うのか
自治体に売るのはハードルが高い。代わりに、住民の相談を毎日受けている議員事務所・政党支部が「暮らしの困りごと案内」として事務所の名前で運用する形を想定しています。土砂災害・津波・避難所の3つと合わせて「議員事務所4点セット」にした経緯は、noteに書きました。公職選挙法の寄附禁止に触れないよう、「特定の人に渡すもの」ではなく「事務所が自らの情報発信として公開するページ」という形にしています。
7. 正直に
- SEOの効果はまだ出ていません。公開が昨日なので、インデックスと順位が付くのは数日〜数週間後です。9月中旬に測り直します
- 収録は名古屋市16区だけです。他の自治体は差し替えで動きますが、まだやっていません
- 電話番号と受付時間は変わります。同梱データは2026-09-07時点で、画面にもその時点を出しています
「どこに言えばいいか分からない」は、行政サービスの入口で最も多い困りごとの一つだと思っています。同じような「窓口が分散している情報」が御社や御地域にもあるかもしれません。ご相談はお問い合わせからどうぞ。