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「通報アプリ」は検索されていなかった——名古屋市の通報窓口を1つの入口にまとめる『Kurage 通報先ナビ』を1日で作って出品するまで

2026年9月7日

名古屋でAIシステム開発の会社をやっています。

昨日、名古屋市の通報先を案内するシステム『Kurage 通報先ナビ(kecnavi)』を作って公開し、今日、買い切り版を出品しました。作る前に測ったこと、作りながら見つけた制約、設計の判断を、順番に書きます。

1. 測ったら「通報アプリ」は検索されていなかった

FixMyStreet(英国発の住民通報OSS)を名古屋市向けに立てようと考えて、先に検索需要を測りました。

キーワード 月間 競合指数
不法投棄 通報 1,300 0
名古屋市 土木事務所 260 5
◯◯区 土木事務所(天白・名東・中村…) 各50 0
道路 陥没 通報 110 0
道路 損傷 通報 アプリ 50未満

人は通報の仕組みを探していません。「不法投棄はどこに通報するのか」「うちの区の土木事務所」を探しています。ここでFixMyStreetを市の代替として立てる案は捨てました。

2. 名古屋市は、すでにやっている

名古屋市には公式LINEの「道路・公園損傷通報」があります。道路の損傷・街路灯・街路樹・公園施設を写真と位置情報で通報でき、対応状況はWebで公開されます。ただし市自身が明記している制約があります。

つまり「市と同じ土俵で通報を受ける」のではなく、分散した窓口を1つの入口にまとめるのが勝ち筋でした。困りごと11種と、住所から区を判定して土木事務所・環境事業所・区役所を出す2つの入口にしました。

3. 市のサイトの文章は転載できなかった

データを集める段階で、名古屋市サイトの再利用規約を読みました。本文は改変不可・引用のみ。政府標準利用規約やCC BYは採用されていません。

一方で、BODIK(CKAN)に出ている名古屋市のオープンデータ618件のうち199件はCC BY 4.0でした。そこで役割を分けました。

情報 出どころ 扱い
土木事務所16件の電話 緑政土木局「連絡先一覧」 番号という事実を転記し、出典リンク
環境事業所16件の電話・住所・受付時間 「各区の環境事業所」 同上
区役所・各事務所の所在地と座標 オープンデータ「施設カルテ」(CC BY 4.0) 加工して利用
全国共通番号(#9910・#9110・188・189・上下水道局) 各省庁・局の公式ページ 事実を転記し、出典リンク
説明文 すべて自前で書く

電話番号・住所・受付時間は著作物ではないので転記できます。説明の文章は一行も写していません。同梱のSETUP.mdにも「自治体サイトの文章を転載しないこと」を明記しました。

4. 設計の判断

緊急連絡先を最上段に固定。 110/119はどのページでも一番上に出し、「このナビは案内であって通報の代行ではない」と書いています。

住所→区の判定。 国土地理院の地名検索APIで住所を解決し、ラベルの「名古屋市◯◯区」を最優先で読みます。無ければ区役所の座標に最も近い区で補い、その旨を画面に出します。

プロキシ越しでも直アクセスでも動く。 公開はレンタルサーバーの透過プロキシ(/kecnavi.php/…)経由です。内部リンクとAPIのパスが1階層ずれるので、X-Forwarded-Host の有無で接頭辞を切り替えます。前日に津波マップの地域ページで同じ罠を踏んでいたので、今回は最初から入れました。

他の自治体はJSON2ファイル差し替え。 wards.json(区ごとの窓口)と contacts.json(困りごと別の連絡順)だけを差し替えれば別の自治体で動きます。区の無い自治体は wards を1件にすれば市全体の窓口になります。

検索の受け皿としての構造。 困りごと別11ページ・区別16ページを個別URLで持ち、title・description・h1に検索語を置き、BreadcrumbList と FAQPage の構造化データ、GA4、OGPを全ページに入れました。sitemap登録・IndexNow送信・GSC再送信まで初日にやっています。

5. 出品まで

買い切り版(税込55,000円・ソース同梱・MIT)を Kurage App Store に出品しました。同梱物は本体・名古屋市の実データ2ファイル・透過プロキシ・systemdユニット・SETUP.md。データベース不要、外部の有料APIも不要なので追加費用は0円です。

6. 誰が使うのか

自治体に売るのはハードルが高い。代わりに、住民の相談を毎日受けている議員事務所・政党支部が「暮らしの困りごと案内」として事務所の名前で運用する形を想定しています。土砂災害・津波・避難所の3つと合わせて「議員事務所4点セット」にした経緯は、noteに書きました。公職選挙法の寄附禁止に触れないよう、「特定の人に渡すもの」ではなく「事務所が自らの情報発信として公開するページ」という形にしています。

7. 正直に

「どこに言えばいいか分からない」は、行政サービスの入口で最も多い困りごとの一つだと思っています。同じような「窓口が分散している情報」が御社や御地域にもあるかもしれません。ご相談はお問い合わせからどうぞ。