質問主意書と答弁書を本文までことばで引けるようにした——「お答えすることは困難」は答弁書の53%にあった
国会議員が内閣に文書で質問する「質問主意書」と、それに対する政府の「答弁書」を、本文の中までことばで引ける道具を作りました。同じ論点で過去に誰が何を聞き、政府が何と答え、どこが「お答えすることは困難」とされたかが1画面に並びます。
- できたもの: https://kurage.exbridge.jp/kshuisho.php/?ref=vwork-kshuisho
- アシストの例(遺族年金 養育費): https://kurage.exbridge.jp/kshuisho.php/assist?q=遺族年金%20養育費&ref=vwork-kshuisho
- オンプレミス版: https://kappstore.exbridge.jp/app.php?id=9701841975d2ed6a&ref=vwork-kshuisho
質問主意書は月1,600回検索されているのに、本文は検索できない
質問主意書は国会法74条の制度で、衆議院・参議院のサイトに質問本文と答弁本文が全文公開されています。検索需要も月1,600回あります(Keyword Planner 実測)。
ただし公開されているのは会期ごとの件名一覧で、本文の中は検索できません。「この論点は過去に誰が聞いて、政府は何と答えたか」を調べるには、会期の一覧を開いて1件ずつ本文を読むしかない。議員事務所の秘書の調査時間はここに消えます。
数字
第212回から第221回国会(2023-10-20〜2026-07-24)の質問主意書を取り込みました。
| 質問主意書 | 2,167件(衆議院 1,189・参議院 978) |
| 政府答弁書 | 2,103件 |
| 提出者 | 164人 |
| 提出から答弁書受領までの平均 | 11.1日 |
| 提出の多い議員 | 浜田 聡 263件、石垣 のりこ 151件、原口 一博 138件 |
「お答えすることは困難」は答弁書の53%
答弁書には定型句があります。語の一致で数えました。
| 定型句 | 答弁書の件数 |
|---|---|
| お答えすることは困難/困難である | 1,116件(53%) |
| 御質問の趣旨が必ずしも明らかではない | 1,491件(71%) |
| 承知していない/把握していない | 380件 |
| 検討してまいりたい | 190件 |
どれか1つでも入っている答弁書は1,817件、86%です。
これは答弁の評価ではありません。定型句が入っているからといって答えていないとは限らないし、入っていなくても答えていないことはあります。ただ、次の質問を書く前に「同じ聞き方をすると同じ型が返る」ことは分かります。「趣旨が明らかではない」と返された論点は、語の定義を先に書いて聞き直す。「困難」と返された論点は、数字と期間と対象を限定して聞き直す。「検討してまいりたい」は、検討の主体と期限と公表方法を聞く。道具の「型」の欄にはそう書いてあります。
作り
- 衆議院「質問答弁情報」と参議院「質問主意書」の公開ページを会期ごとに落とす(1リクエスト1秒あけて)。衆議院は Shift_JIS、参議院は UTF-8
- 経過ページから提出日・内閣転送日・答弁書受領日を、質問本文と答弁本文のページから本文を機械的に抜く。和暦(漢数字)は西暦に直す
- 答弁書の定型句を数えて型にする
- SQLite に入れ、PHP 1ファイルで引く。文章の生成はしない。要約もしない
途中で2つ引っかかりました。参議院のサイトは、User-Agent に製品名を入れると 502 を返し、Python の urllib だと UA を変えても 502 でした。curl だと通ります。TLS の指紋で弾いているようです。衆議院のサイトは1997年からの会期が全部残っていて、古い回次も同じ形式で取れます。
転載の根拠は衆議院サイトの著作権ページにあります。「著作権法上認められた行為として、適宜の方法により出所を明示することにより、引用・転載・複製を行うことができます」。各ページに原文へのリンクを置いています。
しないこと
- 文章を作らない。質問主意書の型(前提の事実・過去の答弁の引用・問い)を空欄つきで示すところまで
- 要約も論評もしない。出すのは本文の機械的な抜粋と、定型句の一致だけ
- 外部のAIやAPIに送らない。検索は置いた場所で完結する。事務所の中で、どの論点を調べているかが外に出ない
昨日書いた「行政データの不整合がAIの自動化を止める」の続きでもあります。質問主意書は、公開されているのに機械に読ませる前提ではない。本文まで引ける形にするだけで、判断の材料が揃います。判断は人がします。