AI駆動経営とは——企業のAI活用を4段階で考える。AIが仕事を起こし続け、人が判断する第4段階
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名古屋でAIシステム開発の会社をやっています。これまで、企業のAI活用を3つの段階で説明してきました。最近、その先にもう一つ、第4段階があると感じています。AIが目的を持って仕事を起こし続け、人は方向を決め、判断し、責任を持つ段階です。ここでは「AI駆動経営」と呼びます。
1. これまでの3段階
- 第1段階:AIに回答や文章を作ってもらう。資料の要約や、説明文の下書き。前後の作業(資料を探す、書式に移す、次の工程へ進める)は人が担います
- 第2段階:AIが社内の資料やアプリを使って、作業を支援する。社内の資料を検索し、Excelやメールを読む。ただ、「次はこれを調べて」と仕事の順序を決め、受け渡すのは人です
- 第3段階:仕組みが業務を進め、人は例外と判断を担う。新しい案件が来たら、過去の資料を探し、見積案を作り、検査して保存する。人の役割は、画面を操作することから、条件を決め、例外に対応することへ移ります
この3段階は製品の序列ではありません。何のAIを契約したかではなく、利用者がどの仕事をしなくてよくなったかで決まります。
2. 第4段階:AIが仕事を起こし続け、人が判断する
第3段階と第4段階の違いは、だれが仕事を起こすかです。
第3段階では、人が前もって決めた業務の流れを、仕組みが自動で進めます。何をきっかけに動くかも人が決めていて、仕組みはその道を走ります。
第4段階では、AIが目的(売上、問い合わせ、認知など)を持ち、いまの状況を見て「次に何をすべきか」を自分で見つけ、仕事を起こし続けます。人は、次の4つを担います。
- 方向を決める:何を目指すか、何をしないか
- 判断する:AIが出した案のうち、どれを進めるか
- 外への行動を承認する:送る、公開する、お金を使う、名前を出す
- 責任を持つ:結果を引き受ける
第3段階が「業務の自動化」なら、第4段階は「経営の動きそのものをAIが回し、人が舵を取る」段階です。
3. 当社で実際に起きていること
当社では、AIエージェント(Claude Code)に、日々の仕事を流れごと任せています。この数日で起きたことを、3つ挙げます。
例1:問い合わせのページに、巡回が1日3万回来ていた
AIが毎日のアクセスの記録を読み、考察を書いています。その中で、「会社のサイトの訪問者が前日の3倍になったが、増えたのは問い合わせのページで、ほとんどが巡回ロボットだ。1日に3万2千回来ていて、本物の問い合わせは0件」と見つけ、直し方(巡回を止める設定、リンクの印)を出してきました。
人がしたのは、「進めて」と言うことだけです。直したあと、ボタンに「無料」と書かれていて方針に合わない、ということもAIが見つけ、人は「『相談する』に直して」と判断しました。
例2:国会トラッカーに、検索から人が来ていなかった
当社は、国会の質疑と答弁をテーマごとに集めるシステムを公開しています。AIがGoogleの検索の数字を読み、「Xからは1日数百人来ているのに、検索からは13日で7人。原因は、狙っている言葉が『年収の壁』(月11万回)のように大きすぎて、ニュースや省庁と競っていること」と分析しました。そのうえで、競合の少ない「国会 答弁」の側に題名を寄せる、検索に強いブログから送る、という3つの案を出しました。
人は「1、2、3進めて」と答えました。題名の変更、一覧ページの作り直し、会議録のデータから作った5本の記事の公開までを、AIが進めました。
例3:市長にフォローされたら、市の避難所のデータのずれが見つかった
ある市の市長に、Xでフォローしていただきました。お礼の前に、AIがその市のデータを調べ、「国の避難場所のデータには、その市の土砂災害のときの避難所が1か所も入っていない。一方、市報では2つの集会所を土砂災害の避難所としている」と見つけました。
AIは、その2か所を当社の地図に「市の発表」として加え、市長へのお礼のメッセージと、国会議員への報告の文面まで用意しました。人がしたのは、伝え方を直すこと(「角が立つかは言い方だよ」)と、送ることです。
3つとも、人が「これをやって」と指示したのではありません。AIが状況から仕事を見つけ、人は判断と、外に出す前の言い方と、送ることを担っています。
4. 第4段階に欠かせない4つのこと
AIに仕事を起こさせると聞くと、勝手なことをされそうで怖い、と感じるかもしれません。当社で回してみて、次の4つがあれば、怖いものではないと分かりました。
- 外に出る行動は、人が承認する。送る、公開する、お金を使う、名前を出す、といったことは、AIが勝手にしません。名前を勝手に決めて外に出してしまい、取り返しがつかなくなった失敗があったので、決まりにしています
- 数字で結果を確かめる。「やりました」ではなく、アクセスの記録や検索の数字で、効いたかどうかを見ます。問い合わせのページの件も、直したあと翌日の記録で減ったかを確かめます
- 人の指摘を記録して、同じ間違いをしない。人に言われたこと(「無料と書くな」「DMは案を出したら送ったものとして扱って」など)を、AIが記録して次から守ります。これがないと、毎回同じことを言うはめになります
- うまくいかないときは止めて、人に返す。自動で送ろうとして2回失敗したら、それ以上試さずに人に任せます。議員の問い合わせフォームに自動で送ろうとして、迷惑メールと判定されたときも、そこで止めて人が送りました
5. 人の仕事は、なくならない。変わる
第4段階でも、人の仕事はなくなりません。変わるのは中身です。
- 画面を操作する、資料を探す、転記する、といった作業は、AIが担う
- 何を目指すか、どの案を進めるか、どう伝えるか、何を引き受けるか、は人が担う
当社の例でも、AIが一番苦手なのは「言い方」と「相手との関係」でした。市長に送るメッセージで、何を先に書き、何を書かないか。そこは人の判断で大きく変わりました。
6. 第4段階に進むには、経営者が先に理解する
第4段階は、担当者やエンジニアだけでは始められません。AIにどこまで任せ、どこで人が判断し、何を外に出してよいかは、経営の判断だからです。
私が経営者向けのAIエージェント・バイブコーディングのセミナーを行っているのは、経営者自身に、AIが仕事を見つけ、進め、人に判断を求める流れを体験していただくためです。そのうえで、自社のどの仕事を任せ、何を人の判断として残すかを考えていただきたいと思っています。
よくある質問
AI駆動経営とは何ですか?
AIが会社の目的を持ち、状況を見て次にすべき仕事を見つけ、起こし続ける経営のやり方です。人は、方向を決め、AIの案を判断し、外に出る行動を承認し、結果に責任を持ちます。当社では、企業のAI活用の第4段階と位置づけています。
業務自動化(第3段階)とAI駆動経営(第4段階)は何が違いますか?
第3段階は、人が前もって決めた業務の流れを、仕組みが自動で進めます。第4段階は、AIが目的と状況から、決まっていない仕事も見つけて起こします。違いは、だれが仕事を起こすかです。
AIに仕事を任せて、勝手なことをされませんか?
外に出る行動(送る、公開する、お金を使う、名前を出す)は人が承認する、結果を数字で確かめる、人の指摘を記録して守らせる、うまくいかないときは止めて人に返す、という決まりを置けば、勝手なことはされません。
第4段階でも人の仕事は残りますか?
残ります。作業はAIが担いますが、何を目指すか、どの案を進めるか、どう伝えるか、何を引き受けるかは人が担います。