神エクセルを採点するデジタル庁の Harunobu は民業圧迫か|機械可読性ルールの採点ツールを MIT で公開した狙いを読む
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名古屋でAIシステムの開発をしている小嶋です。
11月2日の古川デジタル大臣の会見で、機械可読性チェックツール「Harunobu(はるのぶ)」の公開が取り上げられました。デジタル庁が、自分でソフトウェアを作って、オープンソースで配っているわけです。
私たちのように、業務システムを作って売っている会社から見ると、最初に浮かぶのは「国が無料のソフトを配ったら、民間の仕事を奪うのではないか」という疑問です。そこで、公開されているリポジトリの説明(README)とライセンスを読んでみました。
Harunobu は何をするツールか
Excel や CSV のファイルが、プログラムや AI で読める作りになっているかを、100点満点で採点するツールです。セル結合だらけで、見た目は整っているのに機械では読めない、いわゆる「神エクセル」が減点されます。
- 基準は、2026年3月31日に政府が決めた「行政データにおける機械可読性に関するルール」です
- 採点はルールのレベルごとに行い、違反した箇所、違反したルール、その理由を JSON か CSV で出します
- 使い方は、コマンド、ブラウザの画面、Python のプログラムから呼ぶ形の3つです
- 判定は決まった規則で行います(AI で補う機能を付けることもできます)
- 公開先は、デジタル庁の GitHub(digital-go-jp/machine_readability_rule)です。2026年10月21日に公開されました
デジタル庁の狙い
README を読むと、狙いは3つあると読めました。
1. 目的は、まず行政自身のデータ
役所が出す統計や公開データが、AI やシステムで読めない Excel ばかりでは、データを使った行政も、民間でのデータの活用も進みません。ルールも、このツールも、まず行政のデータを直すためのものです。
2. 配っているのは「ものさし」
リポジトリでは、ルールそのものを、機械で読める JSON と CSV で公開しています。採点ツールのほうは、README で「サンプル実装」と書かれています。さらに、「ルールに基づいたExcelファイルの判定、修正などを行うシステム開発時の参考としてご利用ください」とあります。
完成品の製品として配っているのではありません。「このルールは、こう使えば判定できる」という見本を出した形です。
3. 民間が組み込んで売ってよいライセンス
ライセンスは、ツールの部分が MIT ライセンス、ルールの部分が公共データ利用規約(PDL1.0)です。MIT ライセンスは、商用利用も、改変も、再配布も自由です。民間の会社が自社の製品やサービスに組み込んで売ることも認められています。
民業圧迫になるのか
結論から言うと、なりにくいと私は考えています。
なりにくい理由:Harunobu は採点するだけで、Excel を直すことはしません。README でも、結果のファイルを、AI に直させるときの指示書として使うことを想定しています。採点はできても、直すのは別の誰かの仕事です。その「直す仕事」は民間に残ります。
なりうる部分:もし Excel の機械可読性を採点するソフトを売っている会社があれば、無料の公式版と競うことになります。ただ、そういう市場は小さく、デジタル庁の主な目的は行政のデータのほうだと思います。
国がものさしを無料で配り、そのものさしで測られたものを直す仕事は民間に回ってくる。この形なら、民業圧迫というより、民間の仕事の土台を作っていると見るほうが近いと思います。
当社から見ると、乗る側に回るほうが得
Harunobu の作りは、当社が作っているシステムとよく似ています。
- 判定に AI を使わず、決まった規則で採点する
- 点数と、違反した箇所と、その理由を出す
- 直すところは人や AI に任せる
当社の「Kurage 広告表現チェック」や「Kurage Security Check」も、この考え方で作っています。同じ考え方の公式のものさしが出てきたのは、心強いことです。
MIT ライセンスなので、次のような使い方ができます。
- 会社や自治体の Excel を Harunobu で採点し、違反した箇所を AI に渡して直すところまで引き受ける
- AI-OCR で紙の書類を読み取ったデータを、機械で読める形に整えるところまでを一式にする
当社の AI-OCR「Kurage OCR Work」は、注文書や手書きの FAX を読み取って、データにするところまでを行うシステムです。その先の「機械で読める形に整える」ところに、Harunobu のルールを組み込めます。
https://kappstore.exbridge.jp/app.php?id=ef52a62e1c6bbe7a#ref=vibeblog-harunobu
社内の Excel を、AI やシステムで使える形に直したいというご相談は、愛知県内の会社さま向けの AI-IT顧問でお引き受けしています。
https://exbridge.jp/ai-it-komon.html#ref=vibeblog-harunobu
よくある質問
Harunobu は無料で使えますか?
使えます。デジタル庁の GitHub で公開されていて、ツールの部分は MIT ライセンスです。商用利用や改変、自社のシステムへの組み込みも自由です。
Harunobu は Excel を直してくれますか?
直しません。違反した箇所と理由を JSON か CSV で出すところまでです。直すのは人の作業か、結果を AI に渡して直させる形になります。
「神エクセル」とは何ですか?
セル結合や空白の行、見出しの重なりなどで、人が見ると整っているのに、プログラムや AI では読めない Excel のことを指す呼び方です。Harunobu は、こうした作りを政府のルールに照らして減点します。
国が OSS を公開するのは、民業圧迫になりませんか?
今回の Harunobu は、行政自身のデータを直すためのもので、README では「サンプル実装」と書かれています。採点だけを行い、直す仕事は民間に残ります。商用利用も自由なライセンスなので、民間が組み込んで使える形です。