自社ホストの電子署名基盤「DocuSeal」日本語導入ガイド——Docker1行で立てて、署名する相手には日本語画面が届くことをコードで確認した
電子契約SaaSは便利ですが、主要サービスは月額+送信1件ごとの従量課金です(例:クラウドサインはLightプランで月11,000円+送信220円/件・2026年8月時点の公開情報)。注文書・同意書・受領書・社内承認のような「軽い合意」を月に何十件も送る会社だと、この従量が効いてきます。
そこで、オープンソースの電子署名基盤 DocuSeal(GitHubスター18,000超・AGPL)を当社(名古屋のAIシステム開発会社・エクスブリッジ)で実機検証しました。この記事は、Docker1行で立ててテンプレートを作り、日本語対応の実態をソースコードまで掘って確認した導入ガイドです。
先に結論を書きます。
- 署名する相手(取引先)が見る画面と通知は、日本語に完全対応——「取引先に英語画面が届く」心配は不要
- 管理画面(送る側)は英語のみ——ただし画面構成が単純なので、この記事の対訳表で足ります
- 検証バージョン: docuseal/docuseal 3.2.1(2026年8月時点のlatest)
DocuSealとは
PDF(Word/画像も可)をアップロードして署名欄・記入欄を配置し、相手にメールやリンクで送って署名してもらうWebアプリです。DocuSignやクラウドサインの「送って署名してもらう」部分を自社サーバーで実現します。
- フィールド: 手描き署名・イニシャル・日付・数値・チェックボックス・選択肢・画像・ファイル添付・印鑑(Stamp)など14種類
- 監査ログ: いつ・誰が・どのIPから開いて署名したかの証跡と、署名済みPDFの生成
- テンプレート: 定型書類の使い回し。API・Webhookもあり、基幹システムから発行を自動化できる
- ライセンス: AGPL。自社利用なら費用ゼロ。クラウド版(有料)も本家が提供
導入手順——Docker1行
docker run -d --name docuseal \
-p 3000:3000 \
-v $PWD/docuseal-data:/data \
docuseal/docuseal
これだけです。http://サーバー:3000 を開くと初回セットアップ画面になり、会社名・氏名・メールアドレス・パスワードを入れれば管理者アカウントができます。データ(SQLite・アップロード書類・署名済みPDF)はすべて docuseal-data/ に入るので、このフォルダごとバックアップすれば移設もできます。
本番で使う場合は、リバースプロキシ(nginx等)でHTTPS化した上で、環境変数 HOST にドメインを入れておきます。月1,000円前後のVPSで十分動きます。
テンプレートを作って送るまで
管理画面トップは「Document Templates」。UPLOADにPDFを放り込むだけです。
管理画面トップ。UPLOADへPDFをドラッグするとテンプレート作成が始まる
アップロードするとビルダーが開き、右のパレットから署名欄(Signature)・日付(Date)・チェックボックスなどをドラッグで配置します。日本語PDFもそのまま表示されました(下は検証で使った業務委託の覚書)。
ビルダー。右パレットの14種類のフィールドをPDF上にドラッグで置く。AUTODETECT FIELDSで署名欄の自動検出も
配置したらSAVEで保存。あとは3つの出口があります。
- SEND: 相手のメールアドレスを入れて送信(要SMTP設定)
- リンク共有: 発行されたURLをメールやチャットで自分で送る(SMTPなしでも運用可)
- SIGN YOURSELF: 自分で署名(社内承認や受領記録に)
メール送信を使うには、Settings → Email でSMTP(ホスト・ポート・認証情報)を設定します。ここを飛ばしてもリンク共有だけで運用は始められます。
日本語対応の実態——ソースコードで確認した
ここがこの記事の本題です。リポジトリの言語ファイルを直接確認しました。
署名する相手が見る画面(submission form)は日本語に完全対応しています。 フォーム側のi18n定義に ja が入っており(対応言語: en/es/it/de/fr/pl/uk/cs/pt/he/nl/ar/ko/ja)、実際の文字列もこの通りです。
「署名描画エリア。マウスまたはタッチを使用して署名を描いてください。」「署名して完了」
相手のブラウザ言語が日本語なら日本語で表示されます。署名依頼メール等の通知文言も日本語ロケール(約100キー)が用意されています。つまり取引先に届く体験は日本語です。
一方、管理画面のフルロケール(約940キー)は en/es/it/fr/pt/de/nl のみで、日本語がありません。 送る側の社内担当者は英語画面を使うことになります。ただ、前掲のスクリーンショットの通り画面は単純で、使うボタンは実質これだけです。
| 英語表記 | 意味 |
|---|---|
| Document Templates / UPLOAD / CREATE | テンプレート一覧/PDFアップロード/白紙から作成 |
| Signature / Initials / Stamp | 手描き署名/イニシャル/印鑑画像 |
| Text / Date / Number / Checkbox / Select | テキスト/日付/数値/チェック/選択肢 |
| AUTODETECT FIELDS | 署名欄・記入欄の自動検出 |
| SIGN YOURSELF / SEND / SAVE | 自分で署名/相手に送信/保存 |
| Settings → Email / Users / Webhooks | SMTP設定/ユーザー管理/Webhook |
なお、この「署名者向けは日本語済み・管理画面だけ空白」という状態は、先日の Krayin CRM日本語化(2,066キーを翻訳して本家PR)と同じ型の貢献チャンスでもあります。管理画面の日本語化は当社で検討中です。
ハマりどころ(正直に)
- 初回ログイン後にニュースレター購読画面が出ます。 「Skip」で飛ばせます(初見だと面食らう)
- SMTP未設定だとSENDのメールが届きません。 エラーではなく静かに失敗するケースがあるので、まずリンク共有で試してからSMTPを設定するのが安全です
- AGPLライセンス: 自社で使う分には義務は実質ありません。DocuSealを改造して第三者にサービス提供する場合はソース開示義務が生じ得ます
- 法律の話: 多くの商取引の合意は方式が自由で、監査ログ付きの電子的な合意記録で実務が回ります。ただし電子署名法上の推定効や、法令で方式が定められた契約、係争リスクの高い重要契約は既存SaaS・専門家確認の領域です。自社ホストに移すのは「軽い合意」だけにするのが現実的な線引きです(本記事は法的助言ではありません)
さいごに——どこまで自社ホストで、どこからSaaSか
DocuSealは「月額と送信料を軽い合意に払いたくない」会社に良い受け皿です。重要契約はSaaSに残し、件数の多い軽い合意だけ自社ホストへ——この装備の切り分け方と費用試算は、解説ページ「電子契約に月額を払わない方法」にまとめました。
サーバーの面倒を見る人がいない会社向けに、当社で設置からテンプレート整備・日本語マニュアルまでの構築も請け負っています。道具選びの相談は無料の窓口(名古屋AI経営勉強会/Kurage.AIチャット)へどうぞ。