「kintone」というキーワードで戦えるのか——作る前にキーワードプランナーで測った記録
製品を作ってから売り先を探すのを、今回はやめました。先に検索需要を測って、測った結果に合わせて作りました。Google広告のキーワードプランナーで実測した数字を、全部そのまま公開します。
きっかけは「officecliで検索してくる人は顧客じゃない」
うちはAI OSSの日本語解説サイトを運営していて、そこに検索流入があります。Search Consoleで90日ぶんを数えたら、こうでした。
- サイト全体: 44,605表示 / 1,052クリック
- OSS解説ページ259本で 37,011表示 / 683クリック(CTR 1.8%)
- 一番強いのは OfficeCLI のページで 1,077表示 / 54クリック(CTR 5.0%)
流入はある。ただ、ここで手が止まりました。OfficeCLIで検索する人は「自分で作る人」であって、業務システムを買う人ではありません。開発者向けの記事にいくら人が来ても、55,000円の製品は売れない。
では、買う人はどんな言葉で検索しているのか。それを推測ではなく測ることにしました。
使った道具:Google広告のキーワードプランナー
Google広告のAPIから、日本語・日本国内の検索ボリュームと競合性、そして入札単価を取れます。うちは広告アカウントを持っているので、そこから引きました。
最初に測ったのは、素直に「業務システムっぽい言葉」でした。
| キーワード | 月間検索 | 競合 | 入札上限 |
|---|---|---|---|
| 予約システム 無料 | 1,900 | 高 | 1,835円 |
| 請求書 作成 無料 | 1,300 | 中 | 1,175円 |
| 勤怠管理 無料(システム) | 880 | 中 | 1,556円 |
悪くない。でも競合が高い。もっと空いている場所を探して、次に「エクセル自動化」を測りました。ここで最初の発見がありました。
発見1:検索数が多い=売れる、ではない
| キーワード | 月間検索 | 入札上限 |
|---|---|---|
| エクセル 日付 自動 | 9,900 | 3円 |
| エクセル 曜日 自動 | 6,600 | 5円 |
| エクセル 自動入力 | 720 | 391円 |
エクセル 日付 自動 は月9,900回。さっきの「予約システム 無料」の5倍です。喜びかけて、入札単価が3円なのに気づきました。
広告主が1円も払わない言葉は、その先に買う人がいない言葉です。この人たちは関数の書き方を知りたいだけで、システムを買いに来ていません。
ここで指標を切り替えました。ボリュームではなく入札単価で買い手を見分ける。
発見2:kintoneクラスタが、まるごと空いていた
商用意図のある言葉を探して、競合製品の名前を測ってみました。
| キーワード | 月間検索 | 競合 | 入札上限 |
|---|---|---|---|
| kintone / キントーン | 49,500 | 低 | 891円 |
| キントーン できること | 3,600 | 中 | 408円 |
| キントーン と は | 3,600 | 低 | 296円 |
| kintone とは | 2,900 | 低 | 374円 |
| kintone 料金 | 2,400 | 低 | 469円 |
| キントーン 価格 | 1,300 | 低 | 404円 |
| サイボウズ キントーン | 1,000 | 低 | 702円 |
| キントーン 料金 | 880 | 中 | 522円 |
| kintone 料金 高い | 70 | 低 | 468円 |
| サイボウズ 料金 | 260 | 低 | 543円 |
合計で月6万回超。しかもほぼ全部が競合「低」です。
そして検索者の正体が読み取れます。「kintoneとは」「できること」を調べている人は、まだ導入していない検討者です。技術者ではなく、業務担当や経営者。「料金」「価格」だけで月4,970回——これは予算を調べている、つまり購入直前の人たちです。
買う人が、月6万回、空いた場所で検索していました。
発見3:「買い切り」という言葉は検索されない
自社の強み(月額ではなく買い切り)で検索されているかも測りました。
業務システム 買い切り→ ほぼ検索結果が返らない買い切り ソフト 業務→ 同上
「業務システムを買い切る」という概念が、世の中にまだ存在しません。
これは重要な制約でした。いくら「買い切りです」と叫んでも、その言葉で探している人はいない。相手が既に使っている言葉(kintone・料金・無料)で入って、記事の中で買い切りを教えるしかない。
ちなみに 脱エクセル は月210回・入札1,482円。ボリュームは小さいのに単価が高い=痛みを持った買い手がいる言葉です。これは拾いました。
測った結果、こう作りました
ここまでが調査です。以下が、この数字に合わせて実際に作ったものです。
1. 製品の範囲を、検索需要に合わせて決めた
「kintoneとは何か」を調べている人が欲しいのは、多機能なグループウェアではなく「ログインできて、見える範囲が人ごとに違う入れ物」です。だから製品の範囲を、認証・ユーザー管理・社員管理・共有スケジュールの4つに絞りました。日報や経費精算は入れていません。
2. 料金の比較を、公式の数字だけで組み立てた
kintone公式サイトの価格表をそのまま引くと、ライト1ユーザー月1,000円・スタンダード1,800円で、いずれも最低契約は10ユーザー(税抜)。5人の会社でも10ユーザー分を払うので、スタンダードなら年216,000円のうち108,000円が使っていない5人分になります。
この1点が、比較の芯になりました。推測を混ぜず、公式の数字だけで成立する話にしたのは、後で撤回したくなかったからです。
3. LP・記事・製品を、同じキーワードで揃えた
- LP: サイボウズ・kintoneが無くてもグループウェアは持てる(FAQ構造化データつき)
- 製品: 社内グループウェア(買い切り55,000円税込)
- コード: GitHub(MITライセンス・無料)
- 手順書: 導入・運用手順書(Brain)
- デモ: 実際に触れる公開デモ
製品づくりの中身のほうは、noteに実録として書きました。定義ファイル33〜39行のアプリを4本、AIに書かせて足した話です。
反省:ボリュームで選びかけた
正直に書くと、エクセル 日付 自動 の9,900回を見たとき、一瞬「ここだ」と思いました。入札単価を見ていなければ、月1万回の検索がある言葉に向けて、誰も買わないページを作っていたはずです。
キーワード調査でボリュームばかり見るのは、たぶん多くの人がやっている失敗です。入札単価は「その言葉にお金を払う企業がいるか」の投票結果なので、買い手の有無を測るには一番素直な指標でした。
正直に:ここからは仮説です
測ったのは検索需要であって、成約ではありません。
- kintoneの頭(月49,500回)で1位を取るのは現実的ではありません。狙うのは
kintone 料金キントーン できること脱エクセルあたりの中位です - 「競合:低」は広告主が少ないという意味で、オーガニック検索が空いているとは限りません(比較サイトが強い領域です)
- 他社のブランド名で集めるのは借りた需要です。事実を正確に書くことが最低条件で、そこを外したら終わりです
数字が出たら、うまくいってもいかなくても、またここに書きます。
まとめ
- 作る前に測る。うちはこれまで逆でした
- ボリュームではなく入札単価で買い手を見分ける(9,900回で3円の罠)
- 競合製品の名前は、空いていることがある(kintoneクラスタは月6万回で競合「低」)
- 自社の強みの言葉は検索されないことがある(「買い切り」は概念自体が存在しない)
- だから相手の言葉で入って、中で自分の話をする
関連リンク
- 今回作ったLP: サイボウズ・kintoneが無くてもグループウェアは持てる
- 製品づくりの実録: note|サイボウズもkintoneも入れずに、社内グループウェアを持った話
- 自社仕様で作る: バイブプロトタイピング(110,000円税込〜・最短1営業日で動くデモ)
- 一緒に売っていただける方へ: 販売代理店のご案内
- 無料で相談できる場所: 名古屋AI経営勉強会(参加無料・匿名OK) / Kurage.AIに相談する
- 実験の全体像: 複数LP×他社メディア誘導の実証実験